地域おこし協力隊が地域を去るとき
おはようございます。間瀬邦生です。
今や地域おこし協力隊の大売り出しです。
どこの自治体も地域おこし協力隊を採用していますし、過疎高齢化が深刻ではない自治体でも採用しています。地域おこし協力隊の費用は国から出るため、自治体として利用しやすい制度なのでしょう。
さて、本日のテーマである「隊員が地域を去るとき」ですが、私にとって辞めること(撤退)はマイナスではありません。
撤退が正しいかどうかは当人の目指すべき方向と合致しているかどうかです。撤退には大きな決断を要しますし、早期の撤退は、だらだらと延命するよりも英断ではないでしょうか。
私にも中国の暮らしから逃げ帰った経験があります。
1.そもそも必要とされていない
2.地域に嫌われる
3.第三者に嫌われる
4.自治体職員に嫌われる
5.まとめ
地域おこしの必要性がなく、地域おこし協力隊の制度を利用する意味が分からない自治体です。過疎や高齢化の問題がない自治体では、地域ろくな仕事も与えられず、歓迎もされず、隊員のモチベーションが上がることはありません。
そもそも地域おこし協力隊自身が『地域を変えるぞ!』という意気込みで赴任することは、勘違いもいいところかもしれません。
その地域に自分が必要かどうかという問題ではなく、自分自身がそこにいたいかどうかの意思ではないでしょうか。
地域住民にとって、地域おこし協力隊はスーパースターでも何でもなく、単なる住民の一人です。特別扱いなどするわけもないでしょう。
移住希望者や目的を持った人であれば、住民の特別扱いがなくても居心地に問題はなく、むしろ気楽かもしれません。
採用時に、自治体と隊員の認識のズレがないことを祈るばかりです。
担当した地域の住民の考え方と合わなかったり、性格が合わなかったりすることは、よくあることです。赴任先が人口1000人以下の地域すらあり、そのような少人数の地域で気が合わないとき、選択すべき手段はその土地を離れるしかないこともあるでしょう。
合わない職場に長居することはなく、早期撤退も選択肢の一つです。
このパターンが一番気の毒に思えます。
ある特定の住民(団体)と親密になったことにより、それを良く思わない別の住民(団体)に妬まれるということが起きていると聞いています。
『あの隊員は特定の住民(団体)の利益にのみ行動をしている』
といった不満が出てくるということなのでしょう。
公共の利益を守らなければいけない公務員の立場から外れたということで非難されます。そしてやる気を失った隊員はその自治体から去っていきます。
地域おこし協力隊は身分が低いといえども公僕公務員です。その点を配慮して行動しないと思わぬところで落とし穴にはまることもあるでしょう。
人には利害関係があり、ねたみややっかみという感情も存在するということ。絶妙なバランス感覚を必要とするのは政治家さながらです。
本当に怖いのは、外の敵より中の敵。
最大の味方となってもらいたい自治体職員が、最大の敵に変わることもなきにしもあらずです。
『特産品開発を秘密裏に進めたい隊員と、特産品を早く公表したい自治体職員』
というように、お互いの考えが異なることもあるでしょう。
その意見の対立を修復できなかった場合、自治体職員は隊員に不信感を抱き、いずれ信頼関係は失われていきます。
比較的自由な活動が許されている地域おこし協力隊も、自治体に雇われている立場ですから、その結果、パワハラを受けるということもありえます。
くだらない理由によって地域から人が去ってしまうというのは、とても残念であり、自治体にとっても不幸なことに思えます。
地域おこし協力隊が必ずしも優秀な人材ということでもないですが、人材流出について歴史の例をご紹介します。
紀元前221年、それまで分裂状態だった中国は秦の始皇帝によって統一されました。
秦という国の優れていた点は、他国出身の臣下の登用に積極的だったということです。
秦の最初の転機は、統一から遡ること150年ほど前、商鞅(しょうおう)という人物を登用して政治を一変させたことにあります。
秦で信賞必罰の法律を制定した商鞅は、元々は魏という国の人で、魏の国で仕官をしていました。
商鞅の登場からおよそ100年後、范雎(はんしょ)という秦の宰相が登場しますが、彼も魏の国の出身者です。范雎の唱えた遠交近攻により秦の統一への流れは一気に加速することになります。
魏の国は才能ある者を見抜けず、ときには疑い迫害すらしました。こうして優秀な人材をみすみす他国へと逃がしてしまったのでした。