地域おこし協力隊の面接をいくつか受けて感じたこと
おはようございます。間瀬邦生です。
みなさん『地域おこし協力隊』の存在をご存知ですか?
今回、2016年4月1日採用の面接を5つほど受けました。そのときに感じた事をお話しします。
2009年に総務省が制度化したもの。
期間は1年以上3年以下で、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方で地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行う。その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的。とのことです。
参考:ニッポン移住・交流ナビ(http://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/)
求められるスキルは多岐に渡っています。
・パソコンスキル・SNSでの地域の魅力の発信
・農業就業
・地元作物による商品開発
・民泊・観光
・狩猟・有害鳥獣対策・ジビエ
以上のどれかを満たす1名募集、というように大雑把な募集もあります。求められるスキルの幅が広すぎてよく分かりません。実際に話してみると本当に求められていることは、技術ではなく『移住の意思』なのかとも思われます。
※求められていることについて、詳しくは後記『採用基準』に書きました。
1.自治体の職員数名と面接
自治体の規模が『市』だとこの形式が多く、振興担当課の責任者数名が面接官として現れました。
2.自治体の職員数名と町長(村長)と面接
自治体の規模が『町・村』だとこの形式が多く、自治体の長も直接面接官として現れました。
3.自治体の職員が仲介に立ち、地域住民と面接
赴任する地域の住民や、既に赴任している協力隊員を含めた面接です。
私が受けたところは、一時間ほど地域の案内をしていただく時間があり、面接後には希望者に民泊体験も提供しています。
自治体職員はあくまでも仲介役の立ち位置でした。
この形態の面接の場合、時間はかかるものの確かにその地域を知ることできたという実感があります。
1.何をやりたいか?
当たり前のことですが訊かれます。
応募するからには募集要項を見ているでしょうし、募集要項に沿って自分の希望を伝えればいいだけでしょう。
2.任期終了後の未来像
任期後の移住が前提の制度なので、収入を得るための具体的な構想を持っていれば面接官の印象は良いでしょう。明確な将来像がなくても採用される例もあるようで、移住の意思さえ固まっていれば、将来を考えるのはあとでも問題ないかもしれません。
3.どうして、この地域を選んだのか?
ほぼ確実に訊かれます。
私は一貫して以下のように答えました。
『この地域の魅力ある○○を事業として起こしたいからです』
すると、
『○○があればどこでもいいの?』
と訊き返されます。それに対して、
『はい』
とだけ答えました。私にはどの地域にも縁はなく、『ここが第一希望』という強い思いはありません。おそらく面接官にマイナスの印象を持たれたでしょう。しかしそれで良かったと思います。そんな私でも受け入れてくれる自治体の方が気負うことなくやっていけそうだからです。
もし私が採用を意識して良い言葉を取り繕っても、あとあと自分が辛くなるだけで、お互いのためにならないでしょう。
ちなみに応募者の中には嫁の実家が近くにあるからという人もいました。そういった人の方が地元への定着率は確実に高いと思います。
他の応募者と面接会場でお話をしたところ、応募動機には大きく以下の3つがあると思われます。
[1] 移住
[2] 起業(就業)
[3] 興味
それぞれ見据えている最終着地点が違います。
[1] はその土地に対する定住意識が高い人
[2] は事業を起こしたいという意識の人
[3] は地方への興味はあるが、定住や就業の意識が[1][2]よりも薄い人。新卒で応募されている方に多い傾向かもしれません。
採用側が求める人材の順位としては、
[1] 移住 > [2] 起業(就業) > [3] 興味
というのが私の推測です。
[1]移住には、[2]起業(就業)と[3]興味の要素を含んでいます。
[2]起業(就業)に[3]興味の要素を含んでいます。
というように考えると、自治体がもっとも欲しい人材は[1]。
[2]は[1]より明確な事業ビジョンはもっている可能性は高いですが、いざ起業が挫折したときの地域へのこだわりは少ないでしょう。
採用側の立場から考えると、[2]は人材損失のリスクを伴います。事業がうまくいかず半年で退任された地域おこし協力隊の方がいたという事例も聞きしました。
任期途中での退任は『周囲への体裁が悪く、場合によっては以後の採用枠が減らされる』などの悪影響があるのかもしれません。
そんな色々な思惑があっての面接だと思います。
生活の場に『よそ者』が入り込むという繊細な点を踏まえると、性格のマッチングが最大の採用基準かもしれません。一緒に暮らして気持ちの良い人間かどうか。企業の面接よりも相性を重視している可能性は高いと思います。
協力隊一人に年間400万円が税金から投入されます。
最長の三年間の赴任とすると、1200万円の税金をかけて移住者一人を獲得するという見方もあります。赴任中は労働に従事するので、移住支援だけに支払われる報酬ではありません。
とはいえ、私にはその金額の重さを感じないわけにはいけません。400万円という国民の支払ったお金によって自分は何をできるのか。
そんな考えに対して、
『まずは住んで慣れること、そして三年間ゆっくりと仕事を見つけて欲しい』
という言葉をかけてくれた人もいました。
人それぞれ色々な考えがあると思いますが、地域おこし協力隊の活動次第で地域の浮沈を左右することもあるでしょう。
その責任とやりがいは大きく、多くの場所で良い人材が集まることを期待しています。
そして私が採用されたならば、
『間瀬を採用して良かった』
いつの日か地域の方々にそう思ってもらいたいものです。