お客さまの範囲
おはようございます。間瀬邦生です。
収益の柱が農業1本だった就農1年目も、残すところ2か月となりました。
食品加工施設の完成が間近に迫り、右手に農業という武器、左手に加工品という盾を新たに揃え、広い事業展開の準備が整ってきたように思えます。
来年度は、農産品も売り、加工食品も売ります。今日の話の主題は加工食品をどうするかということ。どういう商品を作っていくか、どのように商品を売っていくか。今、色々と思案していることをお伝えします。
まず、知人農家さんの話を1つご紹介します。
「子ども2人の4人家族が食っていけるだけの稼ぎが欲しいのであれば、自分の知人とそのまた知人までに売ることだけを考えていればいい。20人の知人がいて、その20人の知人にそれぞれ興味を持ってくれる知人が5人いて、合計100人が定期的に農産品を買ってくれれば、稼ぎとしては十分なんだよね」
顧客が100人であれば、自分の車で全て配達できる範囲とも言っていました。
この話を真とするならば、一家を養うための事業規模において、新規顧客の獲得は知人友人の口コミで十分ということ。新規顧客の獲得に特別な営業は必要ないということです。
顧客との接点として日々の情報を発信することは欠かさず、SNSは利用しているそうです。
ひとまず仮の目標を『1000人規模の顧客に販売する』とします。友人知人の口コミだけでは新規顧客は足りません。商圏を拡大する必要があります。
過疎化が進んでいる田舎で、地元1000人の直売顧客は現実的でないように思えます。
残る販路は、スーパーに卸して1000人の商圏を得るか、直売の商圏を関東一円くらいに広げるかの二択。
スーパーへの卸しは考えられない(というか大手スーパーは零細企業を相手にしてくれない)ので、商圏を広げての直売を進めていくしかありません。
営業費・広告費をかけられない零細企業が商圏を広げる形で顧客を獲得するとすれば、インターネットを使うのが一番の効果的な方法でしょう。
加工食品事業を競合他社と比較すると、
大手加工食品会社と比べると、安価大量生産では到底かないません。
100人に直接宅配する農家と比べると、顧客と密接な関係を築くという面では劣ってしまうでしょう。
つまり、大手には価格で負け、100人宅配農家には顧客との関係性で負ける可能性が非常に高いというのが現状です。
商品の品質が良くなければ売れないのは言うまでもないことです。どれだけ良い宣伝をしても、どれだけ良いパッケージを作っても、商品そのものの品質なくしてリピートはありません。
しかし商品の品質は、どんなに頑張っても唯一の1位にはなれず、多くの商品が高水準で高止まりし、結局は同率1位で並んでしまうのではないでしょうか。
とすると、商品の品質以外でも個性を出さないと、競合他社との差別化が図れない。
要は『ブランド化をどうするの?』というのが、今非常に悩んでいることなのです。
ブランドの要素は幾つか考えられます。
①製法のこだわり
②食材のこだわり
③美味しさへのこだわり
④健康・安全へのこだわり
⑤事業を通した社会問題への取り組み
⑥事業関係者(私・その他)の個性・哲学
①~④は、食に携わる仕事として当然のこと。しかし限界はあり、高止まりする。また、こだわり過ぎて高価な商品では消費者に選んでもらえない。
⑤~⑥は、非常にデリケートな部分であり、志の高さはときとして重く、伝えればお客様が離れていってしまうことも。
但し、もしこの面での価値観をお客様と共有できれば、商品を超えた密接な関係性を築ける結果になる。
諸刃の剣のような鋭さと危険さを持つ。
農家は脱サラ人間の集まりであったり、生き方にこだわりがあったり、オーガニック思想を持っていたり、個性的な人物が揃っています。
そこにスポットライトを当て、⑤~⑥を踏み込んだ内容で、かつ万人に受け入れられるソフトな表現で発信することがファンを獲得することに繋がるのではないか。
『農家が作る加工食品』の1000人規模のブランド化を達成するため、今、そんなことを思案しています。