1粒1,000円イチゴ、岩佐大輝氏の講演
おはようございます。間瀬邦生です。
8月23日につくば市で行われた「YOUNG Farmer’s Meeting 2018 in 茨城」に行ってきました。
講演を行う岩佐大輝氏は、宮城県亘理郡山元町の起業家です。1粒1,000円のイチゴ、ブランド名は「ミガキイチゴ」を生み出した人物とのこと。
講演「新しい農業への挑戦」をご紹介します。
1.新しい農業への挑戦、10のポイント
2.ミガキイチゴのブランディング
3.スピードの重要性
4.従業員ロイヤリティ(忠誠心)の重要性
5.講演の感想
<仮説>
どのような条件にある地域でも、そこにグローバルレベルで勝負できる農業があれば、その地域は必ず再び栄える。
<ポイント1>
農業はその地域の資源(土地、水、人)と共に営むビジネス。
したがって、その地域にどれだけ貢献できるか、還元できるかという大義と視点がなくては絶対に成功しない。
<ポイント2>
マーケット(市場)の規模とトレンドを注意深く調べること。
農業は投資回収まで10年程度が必要となり、中長期のトレンドを見誤ると大失敗する。
<ポイント3>
参入する作物の構造を分析し、ビジネスの特性を探ろう。規模の経済が効くのか、こじんまりやったほうがいいのか。それによって戦い方が変わってくる。
→例えば岩佐氏の主力作物であるイチゴでは、人件費がコストの半分を占めるので、機械化などで規模を大きくするメリットが少ないとのこと。こじんまりとした農家でも戦っていける作物だそう。
<ポイント4>
地域のレジェンドや既存プレーヤーとがっちり組もう。地縁血縁のサポートがない地域に生身で乗り込むと痛い目に合う。
<ポイント5>
新技術を導入・実証する際は、その技術が「イシュードリブン」つまり問題解決に貢献するかが重要。「テクノロジードリブン」のテックは必要なし。
<ポイント6>
6次化に取り組んだ瞬間に、競争相手は隣の産地や農家ではなく、大手食品会社へ。
ほとんどのケースは失敗する。どうしてもやるなら「原材料調達コストの優位性」か「地域密着性」のどちらか。
→地域密着性とは、「その地域でしか食べられない」などのプレミアのことだそう。
<ポイント7>
農業のリードタイムは長い。イチゴは20か月。成功のカギはどれだけ早くPDCAを回せるか。単独でやっても中長期では絶対に勝てない。
勝つためには、絶対チーム主義で行かなくてはならない。情報はチーム全員でシェア。100社で組めば1年が100年に。
<ポイント8>
海外生産は中長期の視点が重要。少なくても5年、張り続けられる覚悟がなくては立ち上がりまで到達できない。そして、リソースは中途半端ではなく張るときは一気に張れ。
<ポイント9>
高付加価値品ばかりを売ろうとしてもマーケットは限られる。コスト競争力も重要。
地域間競争を海外に持ち込ませない。オールジャパンで勝負せよ。
<ポイント10>
行動こそが、価値を生む。 No action, No future.
岩佐氏のイチゴには複数のランクがあります。その中でトップレベルのイチゴがプラチナランクと呼ばれる1個1,000円のイチゴです。
そしてその下にゴールド、シルバー、レギュラーと続きます。
プラチナランクは収穫量全体の2%、ゴールドランクは20%、希少なイチゴは価格も高く、あまり売れないとのことで、利益も少ないそう。利益の多くは標準的な価格のシルバーとレギュラーで得ているとのことでした。
しかしプラチナやゴールドに意味がないことはなく、むしろその反対。プラチナとゴールドによる「ブランド力」が全体の価格を引き上げているそうです。
トップクラスの商品を作ると、それにつられる形で他の商品の価値(価格)も上げることができるというブランディング戦略だと言います。
前述の<ポイント7,10>にもありますが、スピードと行動することの重要性を強く説いています。
<脱ステップ論>
必ずしも近い市場から順番に開拓していなくても良いと言っています。
県内や首都圏という市場を通り越して、世界に輸出しても良いということ。
国内で売れなくても、海外で売れることはあります。売れる市場に早く進出することはとても重要なことだと仰っていました。
<PDPDPDCA>
PLANとDOを3回、そしてCHECKとACTを1回。
ゆっくりとPDCAのサイクルを回すのでは遅い時代がきています。チャレンジする人の周りには人と資金が集まるということ。まず行動することの重要性を仰っていました。
イチゴの収穫作業は冬から春です。夏は仕事がありません。期間を限定したパート従業員ではやる気や会社に対する忠誠心が育ちにくいと仰っていました。
だから一年を通しての雇用が必要不可欠であると。
雇用のために収穫時期以外ではイチゴ苗の育苗も行っているそうです。
そして、お菓子・ワインといった加工品の生産と販売。イチゴパークといった観光型体験施設も運営しています。
生イチゴ以外の収入により、一年通した雇用を生み出すしくみを創り出していました。
社長の資質とは何か。その1つに「従業員への愛情」を私は挙げます。従業員の年間雇用の話は、まさに従業員への愛情。やりがいや生き甲斐で従業員の人生を豊かにすることに他ならないでしょう。
ビジネスのテクニックはとても大切ですが、テクニックよりも大切にしたいのは人を思いやる心。
そんな思いやりの心を持つ岩佐氏は声も良いのでした。
自分の生き方に自信を持っている人の声とは、やはりこういう声を持っているのだなと思いました。
岩佐氏は著書もあり「絶対にギブアップしたくない人のため成功する農業」「99%の絶望の中に1%のチャンスは実る」など。
さあ、私たちも岩佐さんを見習って、ビジネスをしましょう。
多くの人を幸せにしましょう。
みんなで成功しましょう。