就農して4年間の軌跡(2)食品加工『もうすぐお店ができる』
おはようございます。間瀬邦生です。
今年でサツマイモ農家4年目を迎えました。就農当初から食品加工分野への進出を目指していたのですが、なかなか思うようにいきませんでした。
「なかなか思うようにいかない」のが理由で、お店を開くことへと繋がりました。
売れて儲かってその結果としてお店を建てるわけでは決してありません。うまくいかない現状を打開するための開店です。
お店を開く経緯、それは食品加工のこれまでの経緯であり、併せてお話したいと思います。
1.就農前『干しいも』
2.1年目『加工場の整備』
3.2年目『商品開発に挫折』
4.3年目『原材料の貯蔵と、新商品誕生』
┗ ① 貯蔵庫
┗ ② 新商品
┗ ③ 出荷コストの問題
5.4年目の今年『直売所の整備』
┗ ① 出荷コストの解決策として
┗ ② ついでに農産品も売っちゃおう
┗ ③ 今後
干しいもはサツマイモを使った加工食品の登竜門です。地域おこし協力隊の最終年度に、干しいもを自分の商品に決めました。
生産から加工まで行う農家を目指しての第一歩です。サツマイモは干しいもだけではなく、その他多くのスイーツにも利用できます。そこまで見据えての「サツマイモ・干しいも」に着目。
原材料となるサツマイモの生産から干しいもの加工・販売まで、一年をかけて一連の作業を実践することができ、翌年の就農の土台となった一年でした。
クラウドファンディングにより、食品加工場の改築費用を集めました。
電気水道ガスの整備に、建物の改修。合計で100万円ほど。
この年が食品加工部門の運命の分かれ道だったと思います。もしここで加工場を整えられていなければ、食品加工への進出を断念していたかもしれません。
当時は農業への投資で精一杯で、食品加工への投資ができない状況でした。農業への投資がひと段落するのが就農4年目のことですから、クラウドファンディングがなければ、それまでは食品加工を先送りにしていた可能性もあります。
4年目現在の食品加工の進捗を考えると、このときの皆さまの支援に応えられておらず、まだまだ先は長いのが現状です。
予想以上に食品加工のハードルは高く、少しずつ経験を積んでいく上で、1年目にスタートを切れたのが今更ながら重要に思えます。
さて、どんな商品を作ろうかという2年目でして、結論として「芋チップス」のような商品に決まりました。「芋ケンピ」も似たような部類に入りますね。
収穫したサツマイモの規格外を使いたいという意図があります。
生もののスイーツ(例えばスイートポテト)のような商品だと、賞味期限が短いため、作ったところまでは良くても、結局廃棄ロスになってしまう恐れもあり、賞味期限の長い商品にしました。
加えて規格外のサツマイモは大量のため、大量に消費したいという意図から薄利多売商品となることに。
しかし、この薄利多売商品というのが大失敗でした。
資金力のある大手競合他社に、どうあがいても勝てそうになかったのです。原材料費が限りなくゼロという農家の強みも、それを生産する設備力の差で、コスト的に逆転されてしまいます。
結局、上記に挙げたような商品特性の勉強と、食品衛生の勉強でほぼ1年を費やすことになってしまいました。
① 貯蔵庫
サツマイモは寒さに弱い野菜です。8度を下回ると痛みが早くなります。
まして最低気温がマイナス5度以下になることの多い茨城県常陸大宮市の冬は越せません。ひどい年だと12月で腐ってしまい、年越しすらできません。
そこで、通年でサツマイモを販売・加工するために必要なのが、温度を一定に保てる貯蔵庫です。
貯蔵庫の建設を業者に頼むと、100万円は簡単に超えてしまう代物です。この金額は資金的に厳しいものがありました。しかし、それを20万円で作ることに成功しました。
保冷コンテナを購入し、コンテナ内に電熱線を設置するという簡易的な倉庫ですが、コンテナ内のサツマイモは、無事に冬を越すことができました。
この貯蔵庫の成功は、商品開発の幅を広げ、サツマイモ自体の販売期間が広がることにもなりました。
非常に大きな前進です。
② 新商品
新商品に関しては、私一人ではどうしても完成できないと諦め、知人に外注することにしました。
そこで完成したのが「サツマイモのパウンドケーキ」です。限りなくサツマイモの割合を高めた、おそらくどこにも売っていないパウンドケーキです。
この外注では商品レシピを得られたという価値もありますが、それ以外にも、プロの作る商品、プロの使う調理器具についての知識を多く得ることができました。
やはり苦手な分野は、周囲の協力を仰ぐに限ります。
「コンベクションオーブン」の導入。
この業務用オーブン、大変優れものです。パウンドケーキだけでなく、クッキーもプリンも焼き芋も。どんなお菓子の調理もでき、使い勝手が良すぎます。
一気に商品開発が加速できそうな予感です。
③ 出荷コストの問題
商品の開発が一息つけたところで、次は販売場所の問題が上がってきました。
どこでどう売ったら良いか、有効な場所がないのです。
例えば道の駅。
その商品の認知度が低い。こんな状況では少ししか置いてもらえず、往復で1時間かかる道の駅に運ぶと、利益に対して出荷コストの負担が大きくなってしまいます。
例えばネット販売。
1つの種類の商品しかないと、映えない。SNSなどのPRもやりにくい。多くの商品があってこそ、お客さまの購入の気持ちを刺激するというもの。
以上の理由から、せっかくの新商品も販売には至りませんでした。
① 出荷コストの解決策として
出荷コストの解決策として浮かんだのが、自宅前の食品加工場に直売所を併設するということでした。
自分でお店を経営すれば、自由に出荷日(=直売所の営業日時)を決めることもでき、自由に価格を決めることもできます。
これで出荷コストはゼロ、販売代理店に取られる販売手数料もゼロ。
店の駅に出荷するときは、競合農家との価格競争や陳列場所の取り合いのストレスがありましたが、それもゼロ。
② ついでに農産品も売っちゃおう
直売所という新しい販売ルートを得ることで、JA出荷を主とするサツマイモ一筋だった農業経営も、別の視点で見ることができるようになります。
直売所に並べるのは、何も加工食品だけでなくても良いのですから。
農産物を「直売で売る」という視点から見ると、サツマイモ以外にも魅力的な農産物がいくつか思い当たります。
③ 今後
もちろん直売場は良いことばかりではありません。
無人販売をする時期もあるかもしれませんが、基本的には店員を配置する予定なので、人件費の問題があります。
お客さんがまったく来ない店になってしまえば、それはただの恥さらしになってしまいます。
お店を持てる喜びもありますが、喜びどころじゃないくらいに気持ちを引き締めてもいます。
入りたくなる店作り、SNS戦略、価値のある商品の販売。
書けば一行。実行は無限。やるべきことがたくさんあり、先は長いです。
直売所をきっかけに飛躍したいです。飛躍します!