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茨城県で初?サツマイモ基腐病がうちの畑から出た!

 

おはようございます。間瀬邦生です。

久々の投稿が、私のサツマイモ畑が大打撃を受けたというご報告になってしまいました。サツマイモの産地でもない茨城県常陸大宮市。そんな場所で、予想よりだいぶ早く、基腐病の襲来を受けてしまいました!


茨城県で基腐病の事例は昨年2件ありました。県外で栽培された基腐病に感染した苗が、県内で販売されたとのこと。

昨年から数えて3件目が、私の圃場で起きました。サツマイモ苗を育苗しているビニールハウスで発生。県外からの持ち込みではない、茨城県発の基腐病としては初の陽性。

不名誉な初の称号を得てしまいました。


疑いのある株の発見から陽性の判明。その後の廃棄・消毒までの約一週間をお伝えします。



目次

1.サツマイモ基腐病とは

2.疑いのある株の発見(2022/5/27)

3.疑陽性の連絡(2022/5/30)

4.陽性に備え、対応の確認(2022/5/31朝)

5.陽性の連絡(2022/5/31夕)

6.廃棄消毒(2022/6/1)

7.侵入経路本格調査(2022/6/3)

8.今後(2022/6/4~)



1.サツマイモ基腐病とは

糸状菌によって引きこされる病害。保菌した苗、イモ、残さ(葉や茎の残骸)が伝染源になる。育苗や生育中には茎葉の変色や地際の黒変などの症状、貯蔵中のイモはなり首からの腐敗症状が見られる。台風や降雨で胞子が広範囲に飛散し、農地の中で被害が拡大する。

2018年に沖縄で初めて発生が報告され、これまでに九州地方を中心に被害が拡大。サツマイモの作付け面積で全国1位の鹿児島では、日照不足と基腐病の拡大により、2020年度の収量は前年比2割減ほどの大幅な減収となった。



2.疑いのある株の発見(2022/5/27)

サツマイモ苗はビニールハウス内で育苗していました。暖かくなってきて苗の伸びも最盛期を迎えていた頃。そんな苗切り作業中に、不吉な株を数株ほど発見したのです。

もし陽性だとすると、このビニールハウス内で育苗された苗はすべて陽性の疑いがあることになり、数株程度の被害では済みません。

一抹の不安を覚え、対象株の写真を農業改良普及センターに送信・連絡しました(14時頃)。


疑惑の株を検査したいという電話を受け(16時頃)、その後、農業改良普及センター職員が自宅へ来訪し、疑惑の株を引き渡します(18時30分頃)。

さらにその後また連絡あり、「原因がすぐには分からないため、腐敗部の菌を培養します」との報告を受けました(19時30分頃)。


公務員の仕事は17時で終了と思っていたところ、予想に反した残業時間帯の連絡と迅速な対応に不安感は増します。私の楽観的な見方と違い、職員は深刻に捉えているようでした。



3.疑陽性の連絡(2022/5/30)

農業改良普及センターより、「基腐病の疑いがある」との連絡を受けました。それもかなり高い確率でとのこと。腐敗部の菌の培養した結果、基腐病の糸状菌と思われる胞子が出現したという話でした。

より専門的な施設に検体を回すので、そこでの検査結果待ちとなります。


この時点で、基腐病が確定した場合に備えて、侵入経路を特定するための聞き取り調査をしたいとの話を受けました。



4.陽性に備え、対応の確認(2022/5/31朝)

朝9時に農業改良普及センター職員の来訪。

いよいよ事態は風雲急を告げ、陽性と仮定して話は進められ、以下①~⑥のとおりです。


まずは、侵入経路に関しての聞き取り。

①種芋の入手先

→昨年のウイルスフリー苗から種芋を栽培したと回答。そのウイルスフリー苗に隣接して移植されていた苗の出所なども回答


②種芋の保存方法

→昨年10月の収穫から3月伏せ込みまで、どのように保存していたか聞かれる。圃場と自宅敷地内の倉庫にて保存と回答。外部との接触はないはず


③収穫コンテナやその他資材などの出所

→基腐病多発地域からの中古の譲渡品がないか等の確認


次に、陽性の場合の情報対応を検討。

④苗の移植先

→苗を既に植えた4箇所の圃場の情報の共有。また譲渡した苗の追跡(名前、住所、電話番号の把握)は私が行うことを確認


⑤陽性後の対応

→県主導で、育苗ハウスの種芋の廃棄と土壌の消毒。4箇所の圃場の苗の抜き取り・廃棄と消毒。明日20人以上を動員する体制は整っているとのこと


最後に、私の協力の意思を確認されます。

⑥廃棄への協力

→基腐病に対して廃棄義務の法令はなく、廃棄の実施には生産者である私の承諾が必要とのこと。苗の廃棄は、当然のことながら私の収入減少を意味します


農業改良普及センター職員は丁重に廃棄への協力と理解を依頼してきました。

こういう話になることは予期していたので、この時点で、廃棄を「ほぼ承諾する」意思を伝えます。



5.陽性の連絡(2022/5/31夕)

農業改良普及センター職員との話を終えたあと、陽性は確実だろうという前提で、私は譲渡した苗の追跡を行いました。事情が事情なもので、電話で済ますことはできません。直接回って謝罪と説明に向かいます。半日かけ、市の南西部をほぼ一周しました。


そうこうしているうちに夕方になり、陽性確定との連絡が来ました。

一刻も早く廃棄消毒作業したいという県の強い要請に納得し、翌日の廃棄作業の実施を、このとき「完全に承諾」します。


※ メディアに投げ込み(ニュースの話題になりそうな事を連絡する業界用語)します。と県側から伝えられました。



6.廃棄消毒(2022/6/1)

私は早朝、畑の地主さんへ訪問し事情を説明します。

廃棄に同意する誓約書も、県と交わしました。


作業が始まると人はずいぶん多いようで、昨日は20人体制と言っていましたが、のちのち正確な人数を聞いたところ60人弱とのことでした。

県がこれほどまでに人を動員して基腐病に対応するとは思っていませんでした。私の基腐病への認識は相当甘かったようです。


こうして丸一日かけ、種芋は約800キロ廃棄され、移植済の苗は約1万本廃棄され、移植前の苗は5000本廃棄され、ハウス1棟、約4反の畑は太陽熱消毒状態にあります。


ビフォーアフター、このとおり。



一日の疲れを癒すため、7時から8時は近くの温泉に行ってきました。帰ってきてNHKニュース845を見ると、『茨城県北の生産者で基腐病が発生』と報道されていました。

思い出させるようにさっそく基腐病の報道。今日は最後の最後まで気の休まる暇を与えてくれません。


翌日6/2の新聞にも掲載されました。写真の苗は私の苗です。



7.侵入経路本格調査(2022/6/3)

県の担当部者の方が聞き取り調査のため、水戸の県庁より来訪しました。

先日よりさらに詳細な内容を聞いてきます。


「もし基腐病が、県南の産地で発生したら、大変な打撃を受ける。そうならないために、基腐病がどうやって間瀬さんの圃場にやってきたのか解明しなければならない」


県職員の背負っている大きな使命を感じました。


私の農業経営には、良い虫も悪い虫も、良い菌も悪い菌もいるのが自然な姿という「共生」のポリシーがあります。

基腐病も新型コロナウイルスと同じで、水際対策はおそらく成功せず、いずれやってくるものだと覚悟はしていました。

「ゼロ基腐病」の使命で動いている県の担当の方にとっては、私の「共生」の話題は興味がなかったようで、むしろ不快な気持ちにさせてしまったかもしれません。

その点、少々無神経だったと反省しました。



8.今後(2022/6/4~)

作業が落ち着いたところで、今年の減収額を計算してみると、ざっと120万円の減収というところです。サツマイモと干しいもから得られる収入は250万円程度を予想していたので、まあ半分になります。


茨城県で生産された苗で初の基腐病という不名誉を受けてしまったわけで、次は茨城で初の基腐病を克服した農家ということで汚名を返上したいところ。


今年の空き時間の仕事探し、来年への防疫体制、サツマイモ以外の収入の開拓、今後やることはたくさんありそうです。



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