地域おこし協力隊の面接とセットの親睦会と民泊体験をご紹介
おはようございます。間瀬邦生です。
地域おこし協力隊の採用面接で、地域住民との親睦会と民泊体験がセットになった自治体がありました。長野県長野市篠ノ井信里(しののいのぶさと)地区です。
採用にあたってお互いを知ること。この一言に尽きます。
地域が応募者を知り、応募者も地域を知るということ。
地域おこし協力隊については失敗事例も多く、それを避けるための採用手法として非常に有効と思われます。民泊は任意参加の一泊二食付5000円でした。
1.地域の案内
2.個人面接
3.親睦会
4.民泊
面接のみ実施の自治体が多い中、これだけの相互交流の機会を用意してくれることはたいへんありがたいことだと思います。
車で地域を一周しながら案内していただきました。
信里地区は長野市南部の中山間地域にあります。遠くを眺めればアルプスの山々。下を見下ろせば長野盆地。その壮大な風景と斜面に広がる棚田。
写真に残し忘れたのが悔やまれます。
良質の土が産出されることから陶芸家も住んでいるとのこと。
また長野市の近くに位置することもあり市の中心部へのアクセスも良好。これだけの自然が残っているにも関わらず大型医療機関が近いという安心感も備えている地域とのことです。
他にも色々ありますが、こういうローカルなお話は、時間をかけないとなかなか聞けないでしょう。
親睦会も終わりに近づいたころ、地域の方々が『北信流』という北信地方伝統の歓迎の儀式を行ってくれました。
主賓とゲストが向かい合わせになり盃を交わす儀式です。
私はこういった伝統儀式に対して、『面倒くさいな』という否定的な感情が先にくる人間でした。
しかし、初対面の人間同士で緊張感もある中で、こういった儀式を行うことで場に一体感が生まれるのです。
織田信長が桶狭間に向かって出陣するにあたり、『敦盛』を舞い、熱田神宮で『戦勝祈願』をしたということですが、そういった儀式は人の士気を高め一種の仲間意識を生み出します。
違った考を持った人たちがルールに沿って同じ行動をするというそれだけのことではありますが、それだけのことで人の気持ちは大きく左右するものです。
伝統行事として残っているだけのことはあると痛感しました。
↑現地。町内会長のご自宅です。築25年とのことでしたが綺麗に手入れされています。
↑薪ストーブ。体だけでなく心も温まります。
『おしぼり』とはレストランで出てくる『手を拭くおしぼり』ではありません。大根の絞り汁の意味で、その絞り汁に信州の辛味噌を入れたつけ汁で食べる蕎麦です。
↑大根おろしの身ではなく、汁だけを使っています。
↑この蕎麦の美しさを見てください。ご自宅でこのレベルの蕎麦を提供できるところはそう多くはないはずです。
↑使用している大根。ねずみ大根という名前で山国の痩せ地に育つ辛味大根。名前の由来は先端がねずみのしっぽに見えるからとのこと。
『おしぼり蕎麦』の味はどうだったかといいますと、とてつもなく辛いです。辛党にはたまらない味でしょう。味噌を入れるほど辛みは薄まります。
『信濃に行くなら蕎麦はうまいが、つゆは江戸から持って行け』という言葉が江戸時代にあったそうですが、まさにそのとおりの味でした。
食事のときから寝るときまで、町内会長との話が尽きることはありませんでした。話を聞いていると地域を強く愛しているということが伝わってきます。
その地域愛を感じると同時に、そこまでの地域愛を持っていない自分との温度差を自覚することにもなりました。それは自分が地方で暮らすことの不安にもつながりました。
いずれ感じる不安を先に体験できたということは非常に貴重です。
『本当はお金なんかいらねっけど、宿泊料としてどうしてもお金取っとけって自治体の人が言うから仕方なくてよ』
『こんなに多くの人がここに来てくれて本当に嬉しいんだ。でも採用する人数は決まっているから、本当はみんな採用したいんだけど、恨みっこなしでな』
という言葉が今でも心に残ります。
ここには『人の魅力』があると思いました。
そうして翌朝、とても良い印象を抱いてお別れすることになりました。
人の魅力が残る地域が廃れることはありません。きっとこの地域は末永く栄えていくことでしょう。